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第二話:突破せよ!粘液の迷宮!

 粘液の内部はまるで異次元だった。視界ゼロ。明かりなし。どこもかしこもぬめって、吸い付いて、音すら飲み込んでいく。ゼリーの迷路に飛び込んだ三人はあっという間にバラバラに引き離された。

「……うそ……どこ……!?さっきまでイチローたちすぐ隣にいたじゃん!」

 サブローの声が霞のように溶けていく。右に進んでもゼリーの壁。左も同じ。あらゆる道がねばついて絡まり出口を拒むようだった。

(やべ……このままじゃ、方向感覚が死ぬ)

 そのときだった。ぶちゅっ、と鈍い水音。そして──ぬるり、と白い球体が通路の奥から現れた。

「白血球、まだいたのかよッッ!?」

 サブローの絶叫が漏れる。粘液の中でも敵は来る。密閉されたゼリーの通路でも、白血球は粘膜防衛モードで待ち構えていたのだ。

ぐるる……
ぶくぶく……

 ぬめりの中からねばついた腕のような粘液の触手が伸び、サブローに迫る!

「ひぃぃぃぃッッ!ちょ、無理無理無理ぃぃッッ!」

 一方、イチローもまた別の通路で急旋回を繰り返していた。

「どこだ……どっちだ……!?これじゃ、進んでるのか戻ってるのかすらわかんねぇ……!」

 ぬめる壁が、まるで迷宮のように閉じ込める。

「頼む……感覚を、信じろ……!」

 視覚も聴覚も使えない。ならば──最後に頼れるのは……本能だけだ。イチローは何も考えず、何も見ず、ただ感じた前へ行けという流れに身を任せる。

ぐっ……
ぶるんっ!

 ひときわ強くゼリーの壁が震えた。その先に、かすかに空気の変化があった。

「……あった……道だッ!」

 粘液のトンネルを抜けたその瞬間、イチローの視界が開けた。ぐわんと光が広がる。ねばつきが一気に薄まり、尾が自由に動かせる。粘液の壁はすでに背後に遠ざかっていた。

「……抜けた……ッ!」

 視界に映ったのは広く、血と粘膜の赤が満ちた新たな世界。

「子宮だ!」

 ついに辿り着いた。

「おいイチローッッ!生きてたかァァァッ!」

 どぅるん!と音を立ててサブローが粘液の出口から滑り込んできた。尾をぶんぶん振り回しながら大声で笑っている。

「──やれやれ、全身がゼラチンまみれだ」

 三番手としてジローもぬるりと登場。目を細めて周囲を確認するとスッと口を引き結んだ。

「……三人生きて抜けたか。上出来だ」
「っしゃあああッ!この三人、粘液ごときじゃ止まらねぇッッ!」

 イチローが吠える。

「ぜってぇ、最後まで行こうぜ……この先、なんがあってもな!」

ぴちゃ……
ぴちゃ……

 尾の先で血の湖をかすめながら、三人の精子はゆっくりと進み出す。

「次は……子宮の中、か」
「一番広くて、そして……一番危険な場所」
「でも、もう止まれねぇよな……!」

三つの尾が同時に、ぴしゃん、と水音を立てた。赤く、揺れる空間の向こうへ。

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